石垣裕 x 金村修
(対談の内容はこちらから)
近日公開と言いつつ、大幅に遅れてしまいました。
大変申し訳ございません...。
是非、ご一読ください。
那須
(c)東宝 |
(c)東宝 |
とある長屋で、自殺があった。老武士が首をつったらしい。しかし、住人たちは、その死を悼むよりむしろ「通夜」を口実に酒宴をしてしまう、そんな刹那的な連中だった。元は髪結いで、今は賭場を主宰する不良住人・新三(しんざ)が率先して仕切る。
長屋連中総出でドンチャン騒ぎをする中、一人だけ参加せずに傍観している男は、浪人・海野又十郎である。海野は、再就職のための活動をするよう、妻にせっつかれている。妻は紙風船張りの内職をしていた。
宴会から一夜あけた翌朝、海野は亡き父の手紙を携え、毛利という武士を訪ねた。毛利は、海野の亡き父に恩を受け出世した人物だった。その息 子である自分が頼めば、きいてくれるに違いない。・・・毛利の横に随いて歩きながら、自分の再就職のお願いをしようと必死の海野。しかし、毛利は「今は忙 しいから。この店に用事があるから」と取り合おうとしなかった。「それなら、お玄関でお待ちしております」と、なお食い下がろうとする海野だった。
毛利が用があるのは、質屋の大店である白子屋。この店の娘・お駒と毛利の仕える家老の息子との縁談をまとめれば、毛利自身の出世の足がかりになり、白子屋も武家と閨閥を得られる。かくして、お駒自身の気持ちと関係ないところで画策は進んでいた。当のお駒は若番頭の忠七とデキているのだが。・・・
白子屋は、また、ヤクザの弥太五郎源七一家ともつるんでいた。白子屋がクレームなどの面倒なときのために、用心棒がわりに抱えこんでいる関係である。この日は、毛利につきまとう海野を追い払うために弥太五郎一家を動員する白子屋であった。
さらに、弥太五郎一家は、自分たちの縄張りを勝手に荒らして私的に賭場を開く新三のことも痛めつける。
こうして、長屋の隣人同士である新三と海野は、白子屋−毛利−弥太五郎一家というトライアングル・コネクションにそれぞれの事情で怨恨を抱く。
縁日の夜は雨だった。海野が毛利に再就職の件を再度頼もうと白子屋で待ちぶせしていた頃、新三は縁日の寺でお駒を見つける。そして、ある悪だくみを思いついた。
新三は、お駒を拉致した。妻がちょうどその晩に外出していた海野は、新三が連れこんだお駒を、行きがかり上、自分の部屋にかくまうことで結 果的に誘拐の片棒をかつぐことになった。白子屋のお駒をさらえば、政略縁談を押し進める毛利が困る。白子屋の用心棒である弥太五郎一家も困る。嫁入り前の 娘に悪い噂がたつのを避けたい白子屋としては、番所に届け出るわけにもいかない。・・・
これは、単なる営利誘拐ではない。新三にとっては、自分を目の敵にする弥太五郎一家に一泡ふかせるチャンスだ。海野にとっても、自分を邪険に扱った毛利にささやかな復讐をするチャンスとなる。
たまたま利害の一致した二人の男が、損得でなく意地とプライドをかけて敢行した拉致。果たして、吉と出るのか、凶と出るのか!!??
http://www21.ocn.ne.jp/~kobataka/cinema/kamihusen.html
柳川の沖端漁港で船を係留する“ともえ柱” |