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『ポチの告白』2005年(公開)
監督/高橋玄
出演/菅田俊
野村宏伸
井上晴美
川本淳市
出光元
2005年に発行されたグラフィカ1号の(フォトグラフィカじゃないよ。)Talking about it!というページの中でオランダの新聞の日本特派員を勤めるハンス.ヴァン.デル.ルフトという人がこの映画について序文を寄せていて、当時から興味は感じていたが実際に観たのはDVD化された確か今から2年程前でした。感想を述べる前にあらすじを説明すると(コピペですが)
「所轄警察署の巡査・竹田八生(菅田俊)は実直な警察官で、市民と上司から信頼されていた。ある日、刑事課長・三枝(出光元)に認められ、刑事へと選抜昇任する。同じころ、妻・千代子(井上晴美)も娘を出産する。しかし竹田は実直な性格ゆえに、三枝の命令に盲目的に従い、後輩の山崎(野村宏伸)と共に警察犯罪に手を染めていく。ある日竹田は、三枝たちの悪事を追っていた飲食店経営者・草間(川本淳市)と新聞記者・北村(井田國彦)を抹殺するように命じられる。竹田は草間に警告を与えるが、それでは手ぬるいと感じた山崎は、暴力団を使って草間に重傷を負わせる。草間が行方をくらまし5年が経ったころ、竹田は昇進し、組織犯罪対策課長になっていた。竹田は三枝に代わって暴力団と共犯し、裏金作りに暗躍する。その竹田の所轄で、警視庁の現職刑事・兼頭が殺される。兼頭は5年前の、三枝による麻薬事件の黒幕だった。そのころ、フリージャーナリストとして戻ってきた草間は、三枝や竹田の犯罪をインターネットで報道する。しかし、警察の管理下に置かれた記者クラブによって、草間と北村の告発は阻まれる。そこで2人は外国特派員協会で記者会見を開き、三枝たちの警察犯罪は社会問題となる。すると三枝と山崎は検察や裁判所と共謀し、竹田を首謀者にでっち上げる。竹田は被告として法廷に立つ。」
このあらすじだけだと興味の無い人には(良くわからないが刑事物)というような印象しか伝わらないかも知れないが
今時珍しく(もないかな?)日本の警察や裁判所や報道機関などの腐敗ぶりを徹底的にあばいた問題作として、上映当時はそこそこに話題になっていたらしい。
映画の中判辺りまでは、低予算で制作されているのと主役の竹田八生役の菅田俊の役どころというか存在感が、いかにも
B級映画な雰囲気を醸しだしており、私などは昔、少年時代に某施設内でみさせられた覚せい剤中毒者の更生用ビデオ映画を思い出してしまいました。
裏金作りや未成年女子との淫行、暴力団との癒着などで手を汚しながらもどこか人間味を失わない竹田が身に憶えない以前の殺人事件の罪を上司の三枝から背負うように命令されるあたりから物語は急変する。いや物語は筋にそって進行するのだが役者菅田俊(竹田八生)が急変していく。表情には狂気がやどり眼の力は徐々に光を失いはじめ、どよんとした動かない目の奥に小さく映る弱々しい光がこの後に自分の身に起るどうにもならない現実を表しているかのような、竹田に気持を投影して観ていると胃の中に何か鉛のような重たい物が少しずつ溜まっていくような不快感が増幅していく。他の登場人物たちも皆現実を飲み込むように竹田を追いつめていく。結局ラストまで何も救いが無いまま物語はクライマックスの竹田の独白シーンに。重苦しい気分のままエンディングを向かえたところで何も解放されない。
劇中、事件を告発しようと記者会見を開いたチンピラ崩れのフリージャーナリスト草間が外国人記者クラブで放つ「警察は我が国で最大の暴力団組織です。」という台詞が妙に説得力を感じさせる。確かにそうなのだ。全員拳銃持ってるし圧倒的な情報量もあるしね。こんな巨大な組織が誰か個人の支配欲とかの為に使われたらそれはたまったものではないよ。
最近の御時世では警察の力が強化され、ある側面では以前のような軍国化が危惧される中、警告を意味する為にこの映画は作られたのかもしれない。
でも我々一般市民の生活の安全を守ってくれているのもおまわりさんなのです。
だいたい交番の二階の部屋でシャブ中の巡査がふるえていたり、むかしいじめられていた若い警官が、再会したヤンキーを警棒でぼっこぼこにして口に拳銃突っ込んだり、パトロール中に交通違反の女を強姦した云々、あまりにも強調し過ぎでしょ?そりゃたまにはそういうどうしょうもない事件が公になることもあるけど、いくら何でも話盛りすぎって
もんではないでしょうか?確かに警察もノンキャリアは体育会系の教育を受けている部分が多いので、上司の命令は絶対で理不尽な事でも受け入れ、割にあわない事でも背負っていく自己犠牲的な美意識もあるのはわかりますけどだからって
殺人犯にさせられて自殺することないじゃない。女房子供もいるのにさ、確かに警察組織の歯車にされて自分で考える事とか出来ないから狂って抵抗出来ずに言いなりになるしか選択出来なくなってしまうのだろうけど。
役どころが無骨な熱血警官なだけにこの映画が非常に悲しく恐ろしいものにはなっている。
でも例えば自分だったらと考えるとどうも腑に落ちない。相手が逆らえない上司であっても裏切れない仲間であっても、自分が死んだり家族を犠牲にするくらいなら公務員などやめて暴露本で一儲けたくらんだり、パチンコ屋やスーパー銭湯の利権にまぜて貰ったり、うまいこと情報を横流して暴力団のブレーンに居座ったり。柔軟に考えればまだまだ生きる希望はあったのではないかな?警察組織に歯向かうとその可能性さえ潰されてしまうものなのかもしれないけど。
あんまりにも酷すぎる話なのでかえってリアリティーに欠けているような気がしてならない。
でもそういって他人事で済ませ消費するしかこの映画で受けた衝撃を消化させることが出来ない自分がどこか歯がゆいのも事実ではある、震災後の原発の事とかについても結局考えないようにしている。そのほうが楽だし、そうでないと生きるのが厳しすぎるのだ。
どうでもいいけど三時間半近い上映時間は長過ぎる。真面目に何度も観るには寝不足になってしまいます。
ちなみに主演の菅田俊は北野武のアウトレイジビヨンドにもちょい役で出てたよ。すぐ殺されちゃうけどね。もしかして
この作品での評価で抜擢されたのでは無いだろうか?だったら何故か少し嬉しい気もします。あとハルミイノウエもかなりいいですよ。♡
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